花よりも美しく


聞きたかった言葉が、寸前で止まってしまった

聞く前から、答えなど決まっているのに


「うん?」

「なんでもないです。・・・失礼します」


弱く笑って、月子はその場を離れた

これ以上、踏みいってはいけない

荊の道を歩くのは、痛くて耐え難い


「花びら・・・」


水場に残った百合の花びらを拾い上げ、忍は目を伏せる

真っ白な百合の花びらは、その純潔さを失っている


失わせたのは、誰───?


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