― 君 色 星 ―
「そうか…。この時期のスーパーは忙しいもんなあ。分かりました。また出直しますわ」
中村さんは俺に向かって一礼をして、俺の横を通過し、エレベーターに向かおうとしていた。
けど…
俺はこの人と話してみたい気持ちになった。
香織の過去を知る人物。
香織が人生で一番最初に惚れた男。
俺は何故だか中村さんに興味を覚えた。
「すみません!」
俺は去りゆく背中に声をかけた。
中村さんはゆっくり俺に振り返った。
「あの、外は寒いですし、良かったらうちで香織さんのことを待ちませんか?」