龍馬! ~日本を今一度洗濯いたし候~
ほどなく北辰一刀流の最高位である免許皆伝を受けた龍馬は、千葉道場の塾頭になった。 この当時、長州藩の桂小五郎(のちの木戸考允)は斎藤のもとで神道無念流の塾頭になり、土佐の武市半平太は桃井春蔵(鏡心明智流)の塾頭となっていた。
 ひとくちに、”位は桃井、枝は千葉、力は斎藤”というのだそうだ。
 桂小五郎は、龍馬より二つ年上の二十五歳だった。
「坂本くん。一本どうだい?」
「稽古きにか?」
「そうだ。どちらが強いかやろうじゃないか」桂小五郎には長州(山口県)訛りがない。「あんたと勝負するちゅうんか?」
「そうだ!」
 やがて、仕方なく防具をつけて、ふたりは試合をすることになった。
 対峙すると、この桂小五郎という男には隙がない。龍馬には気になることがあった。自分の胴があいているのだ。桂の剣が襲いかかる。
 龍馬より桂のほうが一枚上手のようである。
 ……どういう手で倒すか?
 桂と対峙して、龍馬に迷いが生じた。……このまんまでは負けるきに!
 龍馬は片手上段でかまえた。桂はびっくりする。こんな手はみたこともない。
 龍馬はさそった。
 ……打つか?
 桂に迷いが生じたところで龍馬は面を打った。
「面あり!」
 あっけなく、桂の負けである。
 ……なんだあれはただの馬鹿胴だったのか…片手上段といい、この男は苦手だ…
 桂は残念がった。
「わたしの負けだよ、坂本くん」桂は正直にいった。
「桂さんもすごかったぜよ」
 ふたりは笑った。

  
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