現実アクションゲーム
「でも、味方ならよかった。あんな怖そうな人が敵だったら、それこそ腰が抜けそうだもん」


笑って言う二葉。


だが、蓮からは表情が消えていた。


……敵。


その言葉が、何度も頭を過ぎる。


どこまで俺は馬鹿なんだ。


なぜ、疑おうとしない。


……そうだ。


拓馬が敵。


その可能性は、充分にある。


では、もし敵だったとしたら。


ここまで連れてきた理由は、一つ。


罠。


何か、罠がある。


考えろ。考えろ、俺。


それなら、このゲームに詳しい理由がわかる。


敵側なら……敵として出てきたCGなら、色々知っていても不思議はない。


敵なら、拓馬の言うことは全て信用できない。


攻略本を持ったプレイヤーが操作しているなんて、嘘だったら。


そもそも、拓馬に出会うまで、蓮は何度も修羅場を潜ってきた。


それが、先程の移動ブロックでは勘だけで、いとも容易くクリアした。


それは、敵側の操作だったら。


蓮の勘で進んでいるように見せているだけで、実は敵がスイッチ一つ押すだけでトラップが変わっていたら……


そのとき気づく、さっきの拓馬のセリフ。


『じゃあ俺は、左へ行く』


あれほど蓮の指示を待っていた拓馬が、自分から道を選んだ。


蓮は両方と言っただけで、誰がどっちに進めばいいかは指示していない。


どちらも同じ道とは限らない。あれほど頭が切れそうな拓馬が、あっさりと自分から選ぶだろうか。


……墓穴を掘ったのか、拓馬……?


疑いは募る一方だった。


そのとき、前方にまたしても、恐怖のアクションステージが待ち受けていた。
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