現実アクションゲーム
「ぐはぁ……」


苦しくなり、首を押さえながらバタバタする蓮。


慌てて、沈んでいくタバコを追いかけた。


急に、視界も悪くなった。透き通るような水の中と言っても、所詮は水中だ。地上とは全然違う。


それでも、タバコをくわえていたときはまるで地上にいるようによく見えた。


おそらく、酸素タバコは視界までよくしてくれていたのだろう。


こうしている間にも、サメは暴れている……


いつ当たるかの恐怖と戦いながらも、ようやくタバコを拾い上げる蓮。


口にくわえたそのとき、地面に何かあるのに気づく。


「……ん?」


あの丸い形には、見覚えがある。


風呂場や、洗面所にあるヤツだ。


それも、巨大バージョン。


排水口だ。


大きな栓がある。だいたい、半径1メートルくらいだ。


そのとき、蓮の頭に閃く。


……わかった。ようするに、サメは剣では倒せない。


あの栓を抜くと、水が抜ける。それまで逃げ切れたら、俺の勝ち。水が抜け切る前にサメの攻撃が当たったら、俺の負け。


なぜ、あんなに大きな排水口に気がつかなかったんだろう。


恐怖で気が動転していた。


そう、ここはゲームの中。諦めるな。


現実に考えれば、あんな巨大なサメを倒すことなんて不可能だ。


だがゲームなら、クリアさせる気があるのなら、何かしら倒し方というものがあるはずだ。
< 85 / 132 >

この作品をシェア

pagetop