現実アクションゲーム
「PCGは、意思を持つことなど有り得ない。だが、その有り得ないことが起こってしまった」


血の気が引いた。吐き気がする。


拓馬の言いたいことが、だいたいわかった。


「PCGって……」


「俺や、お前のことだ」


「……それを、証明することはできるのか」


震える声で蓮が聞く。


「トイレに行きたくならないだろう。お腹が減らないだろう。睡眠はとれるが、眠くなったわけではないだろう。それは、ゲームの中だからじゃない」


鳥肌が全身を駆け巡る。


なぜだろう。


現実の世界には飲食店がたくさんあり、ご飯を食べていた記憶はある。


だが、味までは思い出せない。


「ゲームの中と言えど、呼吸はする。エネルギーを使う。つまり、人間なら、腹は減るはずなんだ……体内のエネルギーを使っているなら、必ず補給が必要になるはずだ」


蓮はゆっくりと首を横に振り、口をパクパクさせた。


あまりにも、拓馬の言葉は的確すぎた。


「はぁ……はぁ……」


息が切れる。


思わず、手で口を覆った。


そのとき感じる、異変。


……吐息が、手に伝わらない。


呼吸をしているのではない。


呼吸してるような動作をしているだけだ。


「待てよ……ゲームの中だから……その……」


何か言いたかった。


認めたくなかった。


突然突きつけられた、真実。


それは、受け止めるには大き過ぎた。
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