初恋の再会

初々しい心




 周りは付き合い始める人が多くなった。
 ま…俺には関係ないか。

「…最近暑くね?」

 授業が終わり、ようやく帰ることが出来た。
 登校するのも下校するのも…いつも一真なので、今も隣で一真が歩いている。
「俺彼女できた!」
「…はぁ?」
あの、人の話聞いてました…?
「へぇ、御前でも彼女って出来るんだね」
「当たり前」
「ま、おめでとう。最近暑くない?」
「ふんっ あとで祝ってよね。確かに暑いかな。そろそろ夏だから?」
俺…夏嫌いなんだよなぁ…。
「あ、棗って今でも夏嫌いなんだ?」
「だいっきらい。冬も嫌いだけど」
「そういうとこ、棗らしいよね」
「…まぁね」


 一真は、…俺の親友。




 自分の席に座っていると、一真が目の前に来た。
「顔色、悪いよ?」
 …珍しい。…この俺が顔色悪いだなんて。
「ん、…ちょっとダルいかな。でも平気。…ちょっと、トイレいってくる」
 俺は適当に返事をすれば、席を立った。

 向かった先はトイレではなく、図書室だった。


「…ふぅ…」
 誰も居ない…っぽいな。
 別に、ダルくはない。…なんでだろ?

――――カタン

音がした。
「…?」
なんだ…? 誰か居るのか…?
「…」
…気のせい…か。

「――――ひ、っく…」

 かすかに聞こえた、誰かの泣き声。此処に…誰かがいる。
 俺は棚と棚の間などを歩いた。
 聞き覚えのある、…誰かの声。

「―――御前…」
 そこに、目を赤くして泣いている…白石がいた。
 しゃがみ込み、声を押し殺して泣いていた。
「…白石…」
 話しかけると、白石はゆっくり立ち上がり、どこかへ去っていった。
 
 何故泣いていたのか、分からないまま。



 しばらく経ち、教室に戻ると、一真が一番に話しかけてきた。

「なっつめー!?? トイレ長くない!?」
「…あー、ちょっと…そこらへん歩いてた」
「…ふーん?」
…白石は…?
 見渡すと、…白石は俺より先に教室にいたようだ。女子に囲まれ、笑っていた。
 さっきまで泣いていたのが嘘かのように。

 ――――強がりだな。



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