さくら、桜。
僕は立ち上がって少女の近くに行こうとした。

「彼女の名前は…」
吉村の声に反応し、すぐに被せた。

「いいです。自分で聞きますから。」

「そうですか…」

吉村を無視して彼女の方へ近づいた。

もうほとんど日が暮れているというのに、彼女はまださくらの絵を描いている。

「暗いと見えずらいでしょ?」

「はい。少し…」

初めて聞いた彼女の声はとても小さく、そして、とても可愛らしい声だった。

『普通じゃないか…』
さっきの吉村の台詞を思い出したが、別に違和感は無かった。

その後僕は彼女が静かに片づけるのを眺めながら言った。

「僕は藤越隼人!また、来てもいい?」
自分でもびっくりするくらい捻りもなく言ってしまい、思わず顔をうつむかせる。

「…うん。」

一瞬聞き間違えたかと思うほどのあっさりした彼女の返事。

『…よっしゃゃぁ!!』

でも僕には嬉しすぎて、心の中で叫びながら、彼女に手を振りながら公園を去った。


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