赤の世界
「あのさ」
シオリが夢に出てきた事を
景に話そうかと思った。
可笑しいだろって。
けれど急に女々しい気がして
やっぱり言い出せない。
「どうした?」
「…シャワー借りていい?」
「いいよ。好きにして」
「あとYシャツも!」
「はいはい。クローゼットの右な」
「ありがと!」
そしてまたひとつ
景への隠し事が増えた。
朝の風呂場は寒い。
朝のシャワーで目を覚ますのに
冬が近づくとそうもいかない。
お湯の温度を少し上げて
シャワーの栓をひねった。