赤の世界
 
「あのさ」



シオリが夢に出てきた事を
景に話そうかと思った。

可笑しいだろって。

けれど急に女々しい気がして
やっぱり言い出せない。





「どうした?」

「…シャワー借りていい?」

「いいよ。好きにして」

「あとYシャツも!」

「はいはい。クローゼットの右な」

「ありがと!」





そしてまたひとつ
景への隠し事が増えた。





朝の風呂場は寒い。

朝のシャワーで目を覚ますのに
冬が近づくとそうもいかない。

お湯の温度を少し上げて
シャワーの栓をひねった。
 
< 34 / 186 >

この作品をシェア

pagetop