Blood†Tear

潮風を浴びながら1人海を眺めるコウガ。


防波堤に腰掛け、陽の光に煌めく水面を静かに見つめていた。


不意に砂埃が舞い、顔の前に手をかざし目を瞑る。




 「やぁ、コウガ・シェイング」


砂埃が止み聞こえてきた声に振り返ると、建物の影に1人、木箱の上に腰掛け林檎をかじりながら此方を見つめる人物が居た。




 「君は……」


 「自己紹介がまだだったね。僕はライア。この腐った世界を変える人物さ」


ライアと名乗る彼は木箱から飛び降り林檎を投げる。


それを難なく片手でキャッチすると間を空けずに投げ返す。


返ってくるとは思わなかったライアは顔面に飛んでくるそれを掴めない。


そのまま顔面に当たると思ったが、ライアの前に何者かが立ちはだかりそれを阻止した。




 「ナイスタイミングだね、スティング」


 「ったく、1人で勝手に姿を消すな」


目の前に現れたのは、ライアと同じ黒いローブを身に纏う長身の人物。


手にした林檎をライアへ返すと地を蹴りその場から離れた。




 「いきなり斬りかかるのはどうかと思うが」


 「煩い……」


先程までスティングが居た場所に突き刺さる刃。


それを引き抜くコウガはスティングを鋭く睨み、彼に再び斬りかかる。




 「1つ、誤解を解いてもいいか?」


コウガの攻撃を、手にした大剣で受け止め言うスティング。


しかしコウガは何も言わず、只々スティングを睨みつける。


何か言葉を求めるようにライアへと目を向けるが、彼は肩を震わせ笑いながら林檎をかじるのみ。


スティングは溜め息を吐くとコウガを見やる。




 「俺はお前の仇ではない」


 「は?」


唐突な言葉に眉を潜めるが、気にせず言葉を続ける。




 「俺はアリア・ダージェス、お前の恋人を殺していない」


彼の口にした言葉、否、名前に反応を見せたコウガ。


微かに目を見開き、一瞬呼吸を止め、何もかも忘れてスティングを見つめた。






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