Blood†Tear

 『すまぬ。心を読んでしまったようだ。』


コウガの反応に謝る彼女。
だが彼女の唇は動いていない。
それで確信した。彼女はコウガの心に直接話しかけているという事を。



 『物分かりがいいな、君は』


 『セルビア、君はリオンの力を奪ったのか?』


話が早くて助かると微笑む彼女に、コウガは冷たく問い掛けた。
すると彼女は再び笑う。



 『奪ったとは言葉が悪い。この力はリオンも了承済みだ』


 『了承済み?』


眉間に皺を寄せ問うと彼女はコクリと頷く。



 『リオンだけは信じておる。だから彼には許可を得た。そして未来を視る青の瞳を分けて貰った。ただそれだけだ』


そう言うと彼女はコウガを鋭く睨む。



 『我は君の力が欲しい』


突然話を逸らしたセルビア。
彼女の言葉にコウガは眉を潜める。



 『…俺は大した力は持っていない……』


 『何を言っておる。お前は持っておるだろう。巨大な力を……』


嫌みに笑うセルビア。
意味ありげな言葉に何が言いたいと顔をしかめていると…




 「大丈夫か?コウガ」


レオンが心配そうに声をかけてきた。
何も言わず佇んでいたコウガを不信に思ったのである。



 「大丈夫。何でもないよ」


ハッとして微笑みそう言うと…



 「イース!?」


ガタリと何かが倒れるような物音と、驚いたように叫ぶリオンの声。


何が起きたのかとそちらへ顔を向けると、そこにはクレアに寄りかかるイースと彼女に駆け寄るリオンの姿があった。


レオンは歩み寄りイースの様子を伺う。


赤く染まる頬。
荒い息づかい。


コウガは屈みイースの額に手を添えた。



 「熱がある……」


数秒して手を離しそう言うと、コウガは彼女を軽々と抱えた。

そして何処か休める宿を探そうと外へ出た。




 「隣を使うといい。部屋は空いておる」


宿を探しに行くコウガ達を引き止めたセルビア。
隣の家を指差し、近くにいたジークに鍵を渡すのだった。





< 56 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop