Blood†Tear
「ローグやその部下に見つかったらどうするのですか……彼は話の通じる方ではありません。ラグナレア国の次期王になる貴方を殺しかねません……」
「わかってる。だが、この国の王女に最も慕われているお前が、敵対している国の王子を心配するなんて、可笑しな話だよな」
8年程前から仲の悪くなったラグナレア国とスウィール国。
敵対する国の王子が1人で様子を伺いに来るなど危険であると真剣な面持ちで訴えるジークだが、レグナードは笑ってみせる。
「それは、貴方だから心配しているのですよ」
せっかくの気遣いも笑い飛ばされムッとしたジークだったが、壁に背を預け腕を組むと天井を見つめぼそりと呟いた。
「一度彼女を傷つけた貴方ですが、ローグよりも信頼できる。
それに、人の事は言えないでしょう?貴方も、シェイラお嬢様の事を心配して此処へ来ているのですから」
「俺はただ、彼女の本心を聞きたいだけだよ」
フッと煙を吐き遠くを見つめるレグナード。
「城壁を建て、更に水堀で周りを囲み、屋敷からは一歩も外に出ないよう兵士に見張らせて。彼奴はどこまでシェイラを縛り付けるつもりだ」
遠くにある屋敷を見つめる彼は煙草を灰皿に押し付ける。
そんな彼の隣でジークはチラリと一度屋敷へと目を向けた後深く溜め息を吐くと目を閉じた。
ゆらゆらと上空へ昇る煙草の煙は暗闇の中にその姿を消す。
空に昇る欠けた月は厚い雲に覆われながらも、明かりの少ない町中を照らしていた。