Cashe Cashe

安物




自分の値段を知った彼は
お手頃な私を買い取った

一番安い私を買った
それはとても嬉しかった
私を買ってくれる人がいるなんて
まるで捨て猫のよう
そこまでけなげじゃないけど

「私はどう?」彼に聞くと
「まずまずだね」声にならない
笑みでそう聞こえた気がする
お口に合わなくてすいません
だけどこれが私です
女の中で一番安い私です

私は安物だから不便だから
捨てられていく
そして売り場で売り飛ばされる
私を選んでくれるのは嬉しいけど
安くても私には心があるんだから

私より価値が安い彼が
私の前に現れる
「坊や、お金が足りないね」
お店の人はそう言って
彼を店から追い出した

私は自ら店を出る
自分の価値なんていらない
自分より高価な私を
選んでくれたのだから
一番安い私を選んでくれたのだから

価値なんていらない



*2010,05,13


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