君に繋ぐ虹

2

雨でぬかるんだ道は歩きにくくて嫌い。
なのに、私は歩く事を止めようとしない。

乗ってきた自転車は河川敷の入り口に停めてきた。
この足で歩きたかったから。
私は私が意識しない内に此処を歩いている。
「・・・どうしてこんなに気になるの・・・?」

バサバサと薄手のコートが11月の川風に浚われて音を経てるけれど、私は気にせずに足を進めて歩く。
気になる。
そう、気になるからだ。
ぬくぬくの部屋でケーキを食べていた時に、何気なく移した視界に入ってきた雨上がりの世界。ケーキの箱を開けるまでは土砂降りだったのに、何時の間にか虹が掛かっていた。
その、雨上がり独特の晴れ間に掛かるキラキラとした虹に私の中の何かが引っ掛かり、

思い出したのだ。

昔、まだ小さな頃に読んだ絵本のお話を。

水溜りをぱしゃりと踏み、その音に私はぎくりと身を竦める。
コートの裾に飛んだ泥水に目を遣りながらふっ、と気付いた。
「そういえば」
あの絵本は誰の絵本だっただろうか。
誰かと、読んだ様な気がする。

そう、私は誰かとあの絵本を読んで・・・。




誰かと一緒に読んだ、あの絵本に書かれた虹の宝物は何処に在ったのだろう。
< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop