魅惑のヴァンパイア
「止めろ」


地獄から湧き出たような、低く冷たい声がした。


驚いて、顔を上げると、ヴラドがこれまで見たこともないような顔でピーターを睨んでいた。


「は…ハハ……。そんなに怒るなよ。ちょっと匂いにやられていただけだ。分かるだろ? こんな美味しそうな匂い。我慢できる方がおかしいぜ?」


ヴラドは、私をピーターから離させ、守るように肩を抱いた。


ヴラドの迫力に、後ろで不満気に柳眉を寄せていたエリザベスでさえも後ずさった。


「おいおい、ヴラド。僕達は旧知の親友じゃないか。どうしてこんな小娘一人にそんなに熱くなるんだよ」


「俺を……これ以上怒らせるなよ、ピーター」


地震のように、地底を震わすヴラドの声。


ピーターは苦笑いをしながら、両手を広げる身振りを見せて、そそくさと逃げていった。
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