魅惑のヴァンパイア
「やっと会えましたね……ヴラド伯爵。いや、プリンスと呼んだ方がいいのかな?」


 背中に悪寒を感じ振り向くと、黒い影がゆらゆらと揺れていた。


黒いマントを靡かせ、白い牙が妖しく光っていた。


「誰だ」


「誰って……さっき挨拶したじゃないですか」


 仮面を外すと、額にさりげなくかかった綺麗な金色の髪が姿を現した。


「まさか……ロード伯爵?」


 言葉に出してみたものの、にわかには信じられない。


先程挨拶したロード伯爵は、でっぷりとした風体で、歳は中年~老年の間くらいだろう。


しかし目の前にいる人物は、スラっとした体格に端整な顔立ち。


自分とほとんど歳が離れていないように見える。


まさかとは思っていたが、自信ありげに微笑む顔を見て、自分の勘が当たったのだと分かった。


「わたしは、誰にでも姿を変えられるのですよ。ちなみに、あなたが追っていたロード伯爵は仮の姿の一部。ロード伯爵を消した所で、王の暗殺を止めることにはなりませんよ」


 男の足は地面から離れ、宙に浮いていた。


掴みどころのない、不気味な笑顔は月の光に妖しく照らされた。
< 151 / 431 >

この作品をシェア

pagetop