魅惑のヴァンパイア
「……なんだって?」


 眉間に皺を寄せ、信じられない様子だった。


「まさか。そんなこと、あるはずない」


 否定はしていたが、明らかに動揺していた。


「いくら僕でも、こんな時に、こんな嘘つかないさ。子猫ちゃんは妊娠している。嘘だと思うなら自分の目で確かめればいい」


「だが……」


「自分のことを子猫ちゃんが愛しているはずないって言いたいのかい? 残念だが、心底お前を愛しているようだよ。自分が死ぬと分かっていても、お前に迷惑がかからないようにと秘密にし、一人で産む気だよ」


「まさか……」


 ヴラドは口元に手を当て、目を泳がせた。


「早く行ってやりなよ。今頃一人で泣いているだろう」


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