魅惑のヴァンパイア
「違うの! バドは悪くないの! 私が口止めしたのよ!」


ドアを開けるなり叫んだ私を見て、ヴラドの動きが止まった。


「シャオン……。ではやはり本当のことなんだな?」


 眉根を寄せて悲しそうな顔で言った。


その辛そうな顔に、胸がドクンっと波打つ。


下を向いて、頷いた。


どんなに怒られようが、軽蔑されようが、耐えようと心に決めた。


「……とりあえず、上に行って二人で話そう」


 穏やかな口調が、逆に恐かった。


「バド、今回のことはシャオンに免じて許してやる。……だが、お前の主人は俺だということを忘れるな」


「もちろんでございます。ご主人様」


 深々と頭を下げたバドが不憫でならなかった。
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