魅惑のヴァンパイア
女神は恍惚に震える唇を閉じると、舞台の幕が降りるように、ヴラドは現実に戻された。


不思議なことに、女神が語っている間、その時の情景がスクリーンに映し出されるように、詳細に頭の中に浮かんでいた。


そして、現在ヴラドと女神がいる宮殿は、女神と王が初めて出会った王宮内と全く同じ造りをしていることに気が付いた。


 死の呪いの真相。それは、女神の言う通り、人間とヴァンパイアが愛することを禁じる呪いではなく、愛した喜びを形として残せる究極の愛の魔法だった。


 ヴラドは何千年、もしくは何万年前にも自分と同じように人間を愛した王がいたことに感動した。


 震える動悸を抑えつつ、自分が何をなすべきか考えた。


「私も、あなたの愛した王のように人間を愛し、子を宿しました。
しかし私は彼女に死んでほしくない。もちろん子供も。
三人で一緒に、共に生きたい。あなたも、共に生きたいとは思いませんでしたか? 
生まれてくる子の成長を見たいとは……」


『……もちろん思った。わらわが命をかけて産んだわが子を、この手に抱きたいと、何度も……』
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