魅惑のヴァンパイア
冷静なバドの一言が、絶望を物語っていた。


どんどん近付いてくる甲冑を身に纏った数千もの軍隊。


綺麗に歩幅を合わせて乱れることなく進んでいる。


そして、黒いフードを被り、屋敷を燃やした者達が、幽霊のように空を泳ぎまわっていた。


「戦うしかないな」


「そのようですね」


 ピーターとバドは、口元に微笑を浮かべて言った。


やけくそのようにも見えるし、戦いを楽しもうとしているようにも見える。


 バドの瞳が紅く染まり、両手をかざすと、私の周りに小さな半円状のバリアができた。


「ここから一歩も出ないでくださいね」


 バドはそう言うと、ピーターと共に空を飛び、幾万の軍勢に突進して行った。
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