魅惑のヴァンパイア
「バド……?」


バドは柔らかな微笑みを浮かべて、私の顔に、自分の顔を近付けてきた。


 そして、バドは私のおでこに優しくキスを落とした。


「このことは、ご主人様には秘密ですよ」


 唇に人差し指を当て、少し照れ臭そうにバドが笑った。


 やだ……やだ……


涙でバドの顔がくすんでいく。


 違うって言って。


すぐに追いかけますからって言ってよ。


 そんな最期みたいなことしないで。


「バド……」


 バドは最後にもう一度、愛おしそうな顔で私を見つめると、バリアを解いて、クルリと後ろを向き歩き出した。


「やっ……! バド! 行かないでっ!」


 必死に手を伸ばして引き止めようとする私を、ピーターが腕付くで抑え込んだ。


「動かないでくれって言っただろう!?」


「バドっ! バド……!」
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