魅惑のヴァンパイア
泣き叫ぶ私を不思議そうな顔でラシードは見つめた。


「チッ! 仕方ない」


 顔をピーターの方に向けられ、ピーターの瞳を見ると身体の力が抜けていった。


 嫌……やめて……


バドから瞳を逸らしたら、バドが遠くへ行ってしまう。


 いつも側にいてくれた。


不安な時も、寂しい時も。


 いつも私の味方でいてくれた。


バドの作った料理が好きだった。


バドの丁寧な物腰が好きだった。


いつだって私の側にいてくれて、見守ってくれていた。


バドが本当は余り笑わない人だって知っている。


でも、いつも優しい笑顔で包み込んでくれた。


その、少し不器用な微笑みで。


いつも、いつも……。


私を片手で抱えて、ピーターはオレンジ色のマントを大きく翻した。
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