うずたま練習ノート
「っ!!」
 
 
 弾かれたように飛びのいた。
 
 やだ。なんで。
 たぬき寝入りなんてひどい。
 
 顔は、世界が歪むほどに熱くなった。
 
 同時に潤んでぼやけた中に、彼の姿を映すなんて到底できなくて。
 
 地面に目を落としながら顔を逸らした。
 
 
 軽蔑された――
 
 
 その思いだけが頭に響いて。
 
 
 だけど、逃げようとしたあたしの手は、
 いつのまにか強く掴まれていて。
 
 殴られる――そう思ってぎゅっと瞑った目には。
 
 
 ――やわらかな熱が、落ちてきた。
 
 
 え?
 
 びっくりして見上げた視界を塞ぐ、
 熱を帯びた彼の顔。
 

「ま、俺もらしくないけどな」
 
 そう言って近付く口元は、
 ケモノの匂いに満ちていて。
 
 すっかり赤に侵されたあたしは、
 ただ唇の熱だけを、感じていた――
 
 
 
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