もてまん

「なぁんだ、あたしが見てるの知ってたんだ」

「お前、人気あったからな。

みんなで、おい今日も北島舞が見てるぞって」


実際、みんな舞の視線を気にして張り切ってた。


「あたしは、いつだって、シゲだけを見てたんだけどな。

ほら、あの日、シゲが大太鼓の台運ぶの手伝ってくれたじゃない?

覚えてる?

あたし嬉しくって、その日の練習中ニヤニヤしてた」



(あいつらが聞いたら、泣いて悔しがるぞ)



繁徳の頭に、自意識過剰な友人達の顔が浮かんだ。

みな夫々に、舞が自分を見に来てるんだ、と信じて疑わず張り切っていた。

繁徳だけはそんな仲間に入ることなく、彼女を見れたことだけで満足していたのだ。


「俺も、ずっとお前のこと見てた。

あの予備校に決めたのも、お前が行くって聞いたからだしな」


繁徳は嬉しさの余り油断して、つい本音が口をついて出てしまった。
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