もてまん



「じゃあ、千鶴子さんお墨付の芸大受験なんて、邪魔されること請け合いだな」



繁徳は舞の元気の出ない訳が、わかった気がした。


「そうだね。

でも、あたしも十八だしね。

そろそろ自分で決断することも大事かなって」

「そりゃあ、そうだよ。

自分の人生だろ」

「千鶴子さんにも、そう言われた。

親を捨てる覚悟もしておかないといけないって」


覚悟を語る舞の姿は、傍から見ても気弱で儚げで、今の現実を受け止めきれていないように繁徳には見えた。


「千鶴子さんは、ちょっと大げさなとこあるからな。

だいたい、千鶴子さんが家出したのは、三十近くなってからだろ。

今の舞には無理だし、そんなことになったら、俺だって心配だよ。

でも、まあ、そんなの取り越し苦労で、丸く収まるかもしれないし……」


繁徳は舞の不安を軽くしようと、必死に言葉を探す。


「そうだといいね。

でも、ぎりぎりまで内緒にしておかないと。

どんな邪魔されるか分からないから……」

「こえぇな」

「そう、恐いんだよ、あたしのママ」


舞が小さく肩を竦め、おどけて見せた。
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