もてまん



飛ぶように日が過ぎた二月の終わり、繁徳と舞の個別試験の日がやってきた。



繁徳は筆記試験。

舞は実技。

舞はこの日に引き続いて、二次、三次の実技試験が控えている。


(俺の結果?死ぬ気で頑張ったんだぜ、聞くだけ野暮ってもんだろう)


父も母も腫れ物にでも触るように、じっと沈黙を守ってる。

だが、繁徳は自分を信じていた。

心配する両親には悪いが、口にすると運が逃げるような気がして、その自信を黙って内に閉じ込めた。



三月八日に舞の三次試験が終わり、三月九日、東工大の合格発表。

繁徳は舞と二人、早朝の発表を見に出かけた。

ゆっくり家で、ネットを通して確認することも可能だったが、繁徳は久しぶりに舞と会いたかったのだ。
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