猫マンションとねずみの塔
ウェスリーは好意からそう言っているに違いない。けれど、僕はそんなものは要らないし、欲しいとも思わない。むしろ、困る。霊感がないウェスリーなら、そんなものは何冊持っていても害はないだろう。けれど、僕はこれ以上幽霊と関わり合いになりたくないのだ。

「きっと役立つよ」

ウェスリーはそう言って僕に無理やり押しつけると、食堂から走って出て行ってしまった。

「はぁ、困るっていうのに」

僕はウェスリーがいなくなっても本をどうしていいか分からなくて、暫くじっと見つめていた。それも時間の無駄だと分かると、足下に置いてあった鞄に無造作に突っ込んだ。
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