戦場駆け征く
酒場での孫凱の話はこうであった。


『榛が何故時間稼ぎに走ったか。それは、同盟です』

『…同盟?』

『榛と玲の戦力差は大きい。榛が少し努力しただけでは埋まらない差があります。
そこで、榛が考えたのは第三者との同盟。―榛と玲の近隣に、佳という国があるでしょう?』


地図を思い出してみる。一番大きな国土を持つ玲の西に位置するのが榛。国土は小さいし、特に力を持っている訳ではない。

そして、佳。
玲の北に位置する国だ。国土はさほど大きくはないが、そこそこの戦力を有する。また、玲の穀物が飢饉になったときは、何時も佳から購入している。

つまり、玲にとって『敵になるには手強過ぎる』相手だという。

もともと、玲では数年前に冷害による大飢饉があり、それ以来その国力を以ってしても慢性的な食料不足が続いている。その供給が絶たれれば、どうなるかは目に見えている。


『…よく考えましたね榛も。』
『榛は、甘いのです』

孫凱は苦笑した。
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