都会の魔女
「何で私が?」
イシュは顔色一つ変えずに答えた。

「なんとなくね。

君なら何か知ってるかと思って。」

「・・・・さあね。
知らないわ。」

イシュは再びアビーに背を向けると 無言のままマンションまで歩き続けた。

そして マンションのエントランスまで来るとアビーの方へ振りかえり
「でも、またおいしい豆大福でも食べたら、何か思い出すかもね。」

と、含みのある言葉を残してマンションの中に消えていった。

アビーはニヤリと笑い
両手をポケットに入れると、背中を丸めながら浮かれた様子で帰って行った。
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