初恋タイムスリップ【完】
「おにいたん」


優くんは地面に、成海くんの顔を描いた。


「じょうず」



成海くんは、またしゃがんで、優くんの描いた絵の隣に花まるを書いた。


優くんはそれを見て、うれしそうに笑った。


そしてまた絵を描き始めた。



「美音みたいに、優に対して偏見を持たない…

世界中の人が
そんな人ばかりだったら

優は、生きていきやすいんだろうな…」



私も成海くんの隣にしゃがんだ。




「優は一生、音のある世界で、聞こえにくい耳で生きていかなくちゃいけないんだ。

偏見

差別

いじめ

一生付き纏うことなんだ。



優を守ってやるのも、大事なのかもしれない。

でもそれ以上に

優自身がそれに負けない強さを持つことが大事なんだ」





優くんが顔をあげた。


「おえ−たん(お姉ちゃん)」


優くんは成海くんの絵の隣に私の顔を描いてくれた。



無邪気に笑っている優くん。


まだ、不安も悩みも

何もない…






私は涙が出た。





「ありがとう!

じょうず!!」




私はその隣に大きな大きな花まるを書いた。



グラウンドは後片付けが終わり、気づくと、優くんと、成海くんと私だけ。




遠くに成海くんのお母さんが見えた。





成海くんは涙をこらえているように、私には見えた。





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