愛した分だけ返ってくる
「…薬、早くきくといいな」

「涼ちゃんの馬鹿っ!!」

いきなり美鈴が大声を出して叫んだ

途端に

ゲホゲホ

また大きく咳きをした

よく見たら、美鈴が持ってたコップが悲鳴をあげてた

「おい、美鈴、コップあぶねー」

俺は美鈴からコップを取ろうとした

意外にも美鈴は素直に俺にコップを渡した

その途端、抱きついてきた

俺は抱きしめ返すことも出来ずされるがまま

「…美鈴」

「もし…もしだよ!あたしが…死んだらっ」

「おいっ!」

「聞いて!!」

美鈴が俺を強く抱きしめてきた

「涼ちゃん、自由で…涼ちゃんの好きなように…縛られないで、暮らしていってね?」

「なんだよ。最後の言葉かよっ」

俺はコップが割れそうになるくらい握りしめていたから、一度床に置くと美鈴が折れるくらい抱きしめた

「涼ちゃん、痛い」

「わざと痛くしてんの!」

「…苦しい…」

「…」

無言で俺は抱きしめたまま

美鈴が涙が俺に付かないように離れようとした

「…」

離れていく美鈴に俺は何も言えない

再びベッドに横になり目蓋を閉じた美鈴に俺は何も言えない

規則正しい呼吸が聞こえてきた

明日が来るかわからない美鈴に、俺は今日「好きだ」も言えない

「どんな美鈴でも、俺が今一緒にいる美鈴じゃなきゃ…俺が嫌だ」

多分俺の思いは伝わらない

★end★
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