ドーンッッッ!!



良からぬ考えを頭の中で抹消して


ここは取り合えずお礼を言う事にした。



「あの…助けて頂きありがとうございます」


本当なら起きあがって言うべきなのだが、影を縫われたように身体が動かなかった。


痛みは無いが、相当重症なんだとやっと分かった。




Bボーイはそんな俺に嫌な顔一つせず、


「いーのいーの。俺も指示されただけだし。

ってか、ヒーリングの光で目、やられちゃうからこのままだけど。

悪いねー。まともに挨拶出来なくてさ」



と、サングラスをトントンと指先で叩いて 申し訳なさそうにしていた。


…なんだ、ちゃんと会話できるんだ。


スルメは食い途中でその辺に捨ててるけどさ…。




「いえ…。あの、俺もこんなんで申し訳ないっすから…」


寝た状態だと会釈も一苦労だったが、ソレ位はしないと、感謝しているのか分からないだろう。


すみません とだけ言って、頭を少し縦に動かした。



それを見た彼は 笑いながら、右手を顔の前で左右に振る。


「仕方ないって。死にかけてたんだしさ。


所で…」



死神は新しくスルメを取り出して口に咥えたかと思うと


突然身を乗り出して、俺の顔の横に自身の顔を寄せる。



何だ…?何が起こるワケ?


一瞬、襲われるのかと肝を冷やしたが、それは要らぬ心配だったようだ。



死神はただ囁きたかったのだ。



「ご両親と妹さんと会えてよかったね」



「…はい」



彼は知っている。あれは夢なんかじゃないという事を。



< 178 / 188 >

この作品をシェア

pagetop