ドーンッッッ!!



最後の母の言葉。



“生きて”



その言葉があったから、俺は今ここで息をしていられるんだと思う。



最後に見えた光は、あの世とこの世を繋ぐ光だったんだ…。



思い出すとまた涙が溢れてくる。


腕に力が入らず、拭う事も出来ずに。ただただ床を濡らしてしまう。


そんな俺を見て、死神は笑いながら、自身のパーカーの袖口でごしごしと涙を拭ってくれた。


痛い位の力だったけど


逆にそれが涙を止めてくれて、今この人が傍に居て良かったな なんて、こっぱずかしい事を考えてしまった。

一人で赤面していると


「さーて。泣き虫ボーイも泣きやんだ事だし。

俺はまだ仕事が残ってるから。先帰るわ」


死神は大きく伸びをしながら立ち上がった。


「お忙しいですもんね。またお手伝いに行かせてください」


空澄が声をかけると、『いつでもおいで』と、嬉しそうに笑う。



じゃあ、と声をかけようとした時。


「そうそう、最後に教えときたい事があったんだった」


キャップの上から頭を掻きながら、また俺の耳元に唇を寄せて来た。



「キミの見た、ここに戻ってこれた時の大きな目印だけど―――――――――………」




彼の低い声で紡がれた言葉は



俺の涙腺を、ジワリと熱くさせた―――――――。






< 179 / 188 >

この作品をシェア

pagetop