木霊の四辻
特殊風紀委員が担うのは、本件のように一般的とは思えない学園風紀の乱れを排除することにある。

矯正という言葉がゆいの口癖なのは、学園入学当初から特殊風紀委員に所属しているからだった。ちなみに、燈哉もゆいも桜木学園には初等部から在籍している。

「空耳だとしても、被害者が多すぎるぜ? ウチのクラスの相田さんに、国語の大野。よそのクラス、学年でも。数えれば片手じゃ足りない。両手が足りなくなるかは、俺も知らんが」

「ふうん」

国語の大野は、少し情けない印象の教師だと記憶している。生徒から時々質問攻めにされ、満足に答えられないでいるところや、上手く統率が取れないところを多々見る。気の弱そうな教師だ。呪いなどという不確かなものに滅入るのも、彼なら頷けてしまった。

だが、相田はどうだろう。彼女は弓道部である。一応は武道に身を置く者として、木霊の四辻などという怪しげなものに、そこまで精神を侵されるだろうか。

ありえない気がした。

だから、

「それだけの実質被害が出ている現状で、空耳っつう説が通用するかねぇ?」

燈哉の問いを、木霊の存在ごと否定する。
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