木霊の四辻
学園ということだけあって、桜木学園は広い。小、中、高校が丘の上を占領するようにまとめて建っている。学園内には共有のメイングラウンドがあり、加えて、小、中、高校用にグラウンドがひとつぜつ配備されている。計四つのグラウンドに加え、体育館とプールが三つ、文系校舎と呼ばれる校舎がひとつ。生徒寮や図書館はもちろん、博物館や映画館、スポーツジム、小さな喫茶店やリラクゼーション施設まで完備されている学園内はさながら、少年少女のために与えられた街といっても過言ではない。

一度入学できれば、よほど学業に置いてきぼりを食らわない限り高校卒業までエスカレーター式のため、この学園に入学したい者は毎年多く、必然的に、偏差値も高い。

ぶらぶらしているように見える燈哉もその実は、かなり勉強のできるほうだった。その、実は勉強のできる男が、

「ま、手当たり次第に調べりゃいいんじゃね?」

とテキトーなことを言うのだから、たまったものではない。人格は、頭の良し悪しではないのである。

「バカも休み休み言いなさい」

無責任男の頭をひっぱたいたゆいは、その足を校舎のある東とは反対に向けた。
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