木霊の四辻
「ははは、おいおい、みみっちい嫌がらせとか言うなよ。そっちで滅入っちまってる人とか、怖がっちまってる人とかいんだぜ? デリカシーねぇなあ」

「アンタに言われたらおしまいよ」

頭をひっぱたいてやった。頭を叩くとバカになるというが、燈哉はもともとバカである。これ以上バカにならない。いや――学業的に見れば頭がいい。ならばそっちもバカになってしまえとばかりにもう一発叩いておいた。

「いてっ、おい、二度もぶつなよ」

「うっさい。で、今野先輩」

「あ、はい」

ゆいと燈哉のやり取りを、猫の喧嘩のようなものだと思っているのだろう。彼女はぼうっとしていた目をしていて、呼びかけられて肩を跳ねさせた。

ゆいは、しっかりしてほしいとばかりに、相手に聞かせる溜め息をついた。
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