木霊の四辻
特風とは、特殊風紀委員の略称である。

特殊風紀委員のことは基本秘密だが、知っている者も当然いる。風紀委員と特殊風紀委員は、水面下で繋がっているのだ。というのも、それぞれの管轄を侵さないためである。事件の取り合いなどというバカげた事態だけは起こさない。

特風が学園の探偵ならば、風紀委員は警察の位置づけだ。

「そうね。ま、そんなところ」

「調査の進捗は?」

「とりあえず、妖怪だとか精霊だとか、バカげた現象じゃないわ。人間の仕業ね」

特殊風紀委員は学園側から選抜され、半ば強制的、運命的に負わされる役目だが、風紀委員は違う。一般的な委員会同様、自信の立候補によるものなので、特風とは異なり、正義感の強い者がその任を負っている。

拍子木かおるは、その最たる者だった。

学園の平和が乱れているにも関わらず、自身は指をくわえているしかない。歯痒さが、顔に滲み出ていた。

その時、燈哉が登校してきた。頭をがしがしと掻きながらあくびをし、だれに挨拶するわけでもなく席へ直行し、砂人形が水で溶けるように椅子へ座って、あっという間にいびきを掻き始める。だらしがなさすぎる。

幼馴染みとして恥ずかしい朝の光景だった。
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