木霊の四辻





驚いて振り返った瀬戸岡亜美は最初、その人物が誰なのかわからなかった。が、徐々に焦点が合っていき、その輪郭をはっきり見止めた時、

「宮部か」
セトオカ
少女に施しをしていただれかが、答えを先に言った。

瀬戸岡は、今度は誰かへ振り向く。その手が持っているスプーンを、まさしく雛鳥のように口を大きく開けて求めた。まともな言葉になっていない声で、「あー、あー」と催促する


薄暗い書斎で床にへたり込み、誰かを見上げる瀬戸岡は、教室での気品が欠片も見受けられない。まるで犬のようだ。

そのさまを、ヘドが出る気分で見つめたゆいは、犯人を呼んだ。

「生徒にこんなことしていいんですかね、大野先生?」

「……なにしに来た?」

「あらあ。徹底的瞬間を押さえられて、シラが切れるとお思いですか」

「……」

暗がりで、立ち上がった大野は眉をしかめたようだった。小さな舌打ちが聞こえてくる自分の

「なぜ、私だと気付いた」

それは、木霊の四辻という怪異の元凶が、という意味の問いだった。

どうやら、シラを切るのはやめたらしい。

ゆいは言ってやった。
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