木霊の四辻
「最初はね、瀬戸岡さんが怪しいと思ったのよ。どうして彼女は、木霊の呪いを受けた生徒を看ているのか。でも、着眼点がずれてた。彼女は被害者を看病していたんじゃなくて、彼女が関わったから木霊の呪いが発生したのよ」

大野はなにも言わない。それが図星だからか、あえて黙り込むことでゆいの出方を見ているのか……暗がりが、それを判然とさせない。

しかし、それは向こうも同じことだった。暗い室内からは、戸口に立った自分の顔は、逆光で満足に見ることができない。

「ある段階で、私は瀬戸岡さんが実行犯だと確信してたわ。まあ、彼女が被害者全員のところを回ってるっていうのも不自然だったし、私が聞いた木霊も、すぐ近くに彼女がいた時のものだったしね。知ってる? 木霊の四辻って噂される呪いはね、ひとりの時に聞こえなきゃいけないのよ」

ゆいは己の推理に自信を持っている。証拠もある。だから常の如く、言葉に迷いはない。

「私の考えはこう。瀬戸岡亜美はボイスレコーダーで被害者の声を採取し、それを流した。恐怖心を煽るために、木霊の四辻って噂と一緒にね。もともと木霊なんて信じてなかったから、木霊の四辻が起こった場所を調べ直したら、やっぱりあったわ」
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