木霊の四辻
「さあてね。あとは新月の役目でしょ。私ら半月の仕事はおしまい。さ、撤収撤収」

怪異を見つけるのが満月組、処理するのが半月組、後始末が新月組と、特風では定められている。

「……瀬戸岡さん、ちゃんとまともに戻れっかなあ」

「さあ。リハビリは必要だろうけど、大丈夫よ、きっと」

「……出任せだろ」

「さあね。なんせ、薬は私の専門外なんで」

「陰陽師のくせに」

「違う違う。私はただのリアリスト。言っても、特殊風紀委員がいいところよ」

そしてゆいは燈哉の背中を押す。

部屋のドアを閉める時、ちらりと中を振り返ったゆいは、

「――怪異なんて、あるわけないでしょ。……バカ」

一言呟いて、がちゃんとそれが閉まるのを、聞いた。





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