木霊の四辻

後日、木霊の四辻事件は、ひとりの教師によって引き起こされた薬物乱用事件として幕を閉じた。

ただし、特風の情報操作により、学園では木霊の四辻が大野のでっち上げだったと、まことしやかに噂として広がっていった。

瀬戸岡亜美や八木、今野、相田ら被害者については、若干の依存性が見られるものの、リハビリで充分回復できる範囲であるらしい。

「まあ、要はあれよ、あれ。木霊の四辻が、実はなんの怪異でもありませんでしたあーって、流されてけばいいわけよ、うん」

「だれに向かって言っているんです」

「アンタ以外にだれがいんのよ」

「あはあ、さようですか」

笑ったのは、同じ学年の天音沢ともえである。女のような名前だが、男だ。ただし自分よりも身長が頭ひとつ分、小さい。声も高めだから、女装をさせたら男とわからなくなるだろう――が、これでも、ゆいにとっては上司だった。

特殊風紀委員は、組織である。学園設立当初から続いている。満月組、半月組、新月組と行動班が分かれているのも、組織ゆえの構成。ゆいの所属する特風半月組はそこからさらに、雪班、月班、花班の三層に分類される。ゆいは末端の花班だった。
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