短編集 cafe an

b,

雪が辺りを白く染め始め
客は全く来ず

相変わらず
静な店内



ディナーメニューの下ごしらえをしていると



カランッ♪
ドアのカウベルが静かに響く



「おはよーざいます。」


低く響く声


カーキのモッズコートにタイとなジーンズ

細い体にモジャモジャのくせ毛


「おはよう。楢崎くん。」



夜のバイト学生
楢崎くん



彼は調理の専門学校生
将来はカフェを持ちたいらしい



手先は器用だし
ラテもカプチーノもほとんどのドリンクを作れる


着替えた楢崎くんがカウンターに入る


ワイシャツにサロン
毎回思う
よく似合ってる…




「尚子(しょうこ)さん。」


彼は私を名前で呼ぶ
他のバイトさんは「店長」なのに…



「楢崎くん。名前じゃなくて、店長って読んでください。」


いつも注意するのに


「はい。尚子さん。」


意味無し…


はぁー…


店長として威厳無いかなぁ…


< 10 / 34 >

この作品をシェア

pagetop