Call My Name
俺は静かな空間に足を踏み入れた

ひんやりした空気に、図書室の独特の匂いに心がほっとする

俺は、奥の棚に向かうと、適当に本を一冊取って、日当たりのよい床にべたっと尻をつけた

本を顔の上に乗せると、瞼を閉じた

紙の匂いがする

微かに、印字したときのインクのにおいもした

兄貴は俺の気持ちを理解している

俺が兄貴と比べられるのが嫌なのを、承知している

昔から言われる…まるで口癖のように「お兄ちゃんは頭もよくて、礼儀正しくて、良い子ねえ。物わかりもいいし…けど、弟は…」

ああ、そうだよ

俺は物わかりなんてよくねえし、読解力だってねえ

空気を読むのも下手だ

嫌なことははっきり嫌だって言うし、兄貴にみたいに我慢強くねえ

どこにいっても兄貴は優等生…んで、俺は劣等生

『できの悪いほう』なんて陰で言われてるのも知ってる

あとは『立宮弟』って言われる

兄貴は『立宮先生』で、俺は『立宮弟』もしくは『やくざの子』

俺ってば、名前で呼ばれるなんてめったにない

俺にだって、親がつけた名前があるんだ『景』っていう名前が…ある

なのに誰も俺の名前を呼んでくれない

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