Call My Name
瑞那を俺が無理やりゲーセンに誘った夜、駅前に菅原が瑞那の帰りを待っていた

俺は遠くで二人のやり取りを眺め…そして家から来た迎えの車に乗り込んだ

…なんだ、うまくいきそうじゃん

駅で、帰りをずっと待っててくれる男なんて滅多にいないだろ

その女が相当好きじゃなきゃ、やんねえよ

ただ菅原が素直になれば、二人の恋愛は報われる

そんな関係なのだと、俺は遠くから眺めて悟った

寂しいのは俺だけ、か

なんて自嘲の笑みを浮かべながら、車から街の景色を楽しんだ

全てが寂しい風景に見える

ああ、俺は一人か

瑞那になら、俺をわかってもらえるかもしれないと思ったのにな

車の窓から見える悲しい風景の中に、瑞那が蹲っているのが見えた

なんで?

二人で楽しく帰ったんじゃねえのかよっ

「停めろ」

俺は運転している男に命令すると、完全に停車してない車のドアを開けて、飛び出した

どうして、また今にも泣きそうな顔をしてるんだよ

俺は瑞那に駆け寄ると、瑞那の背中からそっと抱きしめた

なんでそんな辛そうな表情をしてる?

駅で、好きな男が待っててくれてたんだろ?

普通なら、喜びながら、二人で家に向かってるはずだろ

どうして、そんな苦しそうな顔をしてるんだ

< 69 / 149 >

この作品をシェア

pagetop