Call My Name
「吐いていいよ」

スイレンの鈴のような声が、俺の耳元で囁いた

俺は少し違和感の残る胸で、深呼吸をしてから、スイレンの背中をポンポンと優しく叩いた

「サンキュ」

「立宮君?」

俺はスイレンから離れると、にっこりとほほ笑んだ

「もう平気だから」

「でも…顔、まだ真っ青だよ?」

「ん…吐き気は治まった」

俺は2年の教室の廊下で、尻をつけて座ると、前髪を掻きあげた

「あー、マジで吐くかと思ったぁ」

俺が苦笑すると、スイレンが心配そうな顔をしながら立ちあがった

「スイレン、スカート短すぎぃ。パンツ、見えるよ」

「え?」

俺の言葉に、スイレンが顔を真っ赤にしてスカートを押さえた

見えたわけじゃねえけど…なんか、スイレンの悲しい目を見ていたくねえんだ

「ラッキー。スイレンのパンツ、タダで見られた」

俺は笑顔をつくって、立ちあがると、スイレンの頭を撫でた

「立宮君っ!」

「あははっ。ツバキには内緒なぁ。スイレンのパンツを見たって知られたら、俺が殺される」

俺はケラケラと笑い声をたてながら、廊下を歩き始めた

ありがと、スイレン

助かったよ

吐かずに済んだ

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