天使の羽が降る夜に


雨や風は力を強める。

俺たちの行く道をさえぎるかのように。

「くっ・・・」

「きゃ・・・」

俺の後ろ側に未紅を隠すが・・・あまり意味はなかったようだ。

しかも体力が奪われて・・・思うように前に進めない。

それでも何とか出口が見えてきた。

チクショー。

体が動かねぇ。

「・・・聖夜」

「ん?」

「だ、大丈夫ですか?」

「ああ」

返事はして見るものの・・・そろそろ限界に近い。

いつもの道なら魂と未紅くらい運べるんだが・・・今日はムリだ・・・。

どうする。

悩んでいると・・・・ブワ~と突風が吹く。

「うわっ」

俺の体が流される。

「聖夜!」

未紅が咄嗟に俺の腕をつかんだ。

「未紅!」

俺は未紅の姿にハッとする。

羽が・・・羽がほとんどすりきられている。

まずい・・・未紅も、そろそろ限界だ。




意識が飛びそうになる中、舜との約束を思い出していた。

『未紅を守って欲しい』

そう言って俺に未紅を託した舜。

その気持ちは、どれほど辛いものだっただろう。

それなのにこの10年、俺は未紅を守ってきたどころか・・・困らせることばかり。

今ならどんな気持ちで舜が未紅を助けたのか分かる。


誰よりも愛しい人を守るために、あいつは自分の命より美紅の未来を優先した。

俺にもそんな気持ちがやっとわかり始めてきたところだ。

まだまだ舜には適わないが、俺なりに美紅を‥‥愛している。

愛しているんだ。







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