マジック・エンジェルほたる
しかし、有紀には慰めの言葉はもはや聞こえなかった。またしても自分の心の部屋に閉じ籠ってしまってから、氷と痛烈な寒さに満ちた場所へ逃げ込んでしまったのだ。小刻みに震え、風邪で咳き込みつつ『表』を凝視している。
「おい、黒野!ずいぶんと成績が落ちたもんだなぁ。いつもトップのお前が32位とは」
いつの間にか、社会科の”メガネ猿”こと有田先生が三人に近付いてきて声をかけた。「…なにかあったのか?転んで頭でも強く打ったか?悪い物でも食ったか?」
有田先生のいやみにも、有紀はなにも答えなかった。
「あの…有紀ちゃん」由香と蛍は彼女の肩にそっと手をかけて、やさしく包むように微笑んだ。
有紀は二人の手の微かな温かさと、手触りと、優しさに包まれたことを感じて、ほんのわずかだが体の力を抜いた。震えが止まった。しかし、凝視を続ける目は『表』から離れようとしない。
まるで催眠状態にでももかかったかのようだ。そして、次の瞬間、つぶやきが始まった。呟き、呟く、呟いていく、呟いたら…呟く。呟き呟き。
「なにいってんの?有紀ちゃん」ふたりはそっと耳を彼女の口元に近付けた。「…?」
「…そんなこと…信じられない…わ。こんなに成績が…。こんなんじゃ…立派な教育者なんて……。こんな……んじゃ…あ…」有紀ちゃんはつぶやくように同じ文句を唱えていた。「こんなんじゃあ…こんなんじゃあ…こんなんじゃあ…」何度も呟く。
二人は驚くと同時に、無ねから全身へ痛いほどの哀れみが広がるのを感じて黙りこんだ。彼女を両手で抱き抱えて、慰めてやりたいとも感じたが、あえてしなかった。だけど、何とかしなくちゃならない。そうしなければ、彼女はまた元にもどってしまう。ーそうだ! 二人は流行りのポップスをうたいはじめた。
「おい、黒野!ずいぶんと成績が落ちたもんだなぁ。いつもトップのお前が32位とは」
いつの間にか、社会科の”メガネ猿”こと有田先生が三人に近付いてきて声をかけた。「…なにかあったのか?転んで頭でも強く打ったか?悪い物でも食ったか?」
有田先生のいやみにも、有紀はなにも答えなかった。
「あの…有紀ちゃん」由香と蛍は彼女の肩にそっと手をかけて、やさしく包むように微笑んだ。
有紀は二人の手の微かな温かさと、手触りと、優しさに包まれたことを感じて、ほんのわずかだが体の力を抜いた。震えが止まった。しかし、凝視を続ける目は『表』から離れようとしない。
まるで催眠状態にでももかかったかのようだ。そして、次の瞬間、つぶやきが始まった。呟き、呟く、呟いていく、呟いたら…呟く。呟き呟き。
「なにいってんの?有紀ちゃん」ふたりはそっと耳を彼女の口元に近付けた。「…?」
「…そんなこと…信じられない…わ。こんなに成績が…。こんなんじゃ…立派な教育者なんて……。こんな……んじゃ…あ…」有紀ちゃんはつぶやくように同じ文句を唱えていた。「こんなんじゃあ…こんなんじゃあ…こんなんじゃあ…」何度も呟く。
二人は驚くと同時に、無ねから全身へ痛いほどの哀れみが広がるのを感じて黙りこんだ。彼女を両手で抱き抱えて、慰めてやりたいとも感じたが、あえてしなかった。だけど、何とかしなくちゃならない。そうしなければ、彼女はまた元にもどってしまう。ーそうだ! 二人は流行りのポップスをうたいはじめた。