マジック・エンジェルほたる


  魔界とは、文字通り「魔物の住む世界」のことである。ギリシア神話でいえばハデスが支配する冥界に似ている。石灰岩質の岩山ま多い地域に薄暗い鍾乳洞があって、そうした巨大な空間が冥界である。ハデスはその冥界の王だ。そして魔界をいま支配するのは魔の女王ダンカルトだった。ダンカルトは石造りの魔物のような大きな化物だ。
 薄暗い空間。長い支柱…。魔界の「三騎士」とよばれる人間らはゆっくりと魔の女王の前へと進んだ。この「三騎士」と呼ばれた人間たち…いや、正確には人間の姿をした魔物の名は、アラカン、フィーロス、ダビデ、であり、アラカンとは「魔天使」アルカンのことだ。アラカン、ダビデは男性の姿をした魔物で、フィーロスは美貌と知性と残忍性をかねそなえた女性の姿をしている。スマートな体躯、細長い顔に足首、きらきらした髪、鷹のような鋭い目、肌は青白く透明に近い。服装はまるでナチスのゲシュタポが着ていたような「道徳上好ましくない」ものでもある。腰には重そうなベルト、突撃隊のようなアグレッシヴなロング・ブーツ…。
 まさに人類にとって、ペルソナ・ノン・グラータ(好ましくない人物)たちである。
 フィーロスはダビデとピッタリとくっついて立ち、魔の女王ダンカルトと向き合った。忠僕アラカン、ダビデ、フィーロスは尊敬的で丁重な言葉で、
「御機嫌うるわしゆう、ダンカルトさま」と挨拶をして頭をさげた。魔の女王ダンカルトはスペインのガウディの塔くらいに巨大で凄まじい存在感がある。
「地上の侵略の具合はどうか?」
 ダンカルトは低く響く声で、穏やかな口調のままいった。
「はっ。」アラカンの太い眉がピクリと動いた。
「誠にこのましい状態にあるといえます。ですが…地上を支配するためには、伝説の「トゥインクル・ストーン」という輝石が必要となるのです!」ここぞとばかりに、アラカンは「輝石」のことについて熱心に説明した。しかし、ダンカルトは表情ひとつかえなかった。
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