マジック・エンジェルほたる
に言ってんだか、この馬鹿蛍!」
 由香は少しムッときて怒鳴った。そして、気分を落ち着かせてから、おだやかな口調で、「あの、有紀ちゃん。一緒にいくわよね?」
「……あぁ。だから…その…私…」
 やっぱり有紀の声はきこえない。
「ねぇ、いこうよぉ。一緒にさあっ。たいした絵じゃないけどさぁ」蛍は失礼なことをいった。由香は呆れて「ぁんたねぇ…いっていいことと悪いことがあんでしょ…?!」
「…あの…ごめんなさい。その…」
「……え?」
 ほんの微かではあるが蛍と由香の二人組は有紀の弱々しい声を聞いた…ような気がした。「……え?え?え?」ふたりはオドオドと立ち尽くしている黒野有紀の口元に、静かに耳を近付けた。そして…、
「…あのっ。ごめんなさいね。もう一度、いってくれるかしら?」と明るくお願いした。「…あの…」有紀はやっと動揺した声で囁いた。「…だから……ごめんなさい。私…いけないわ」
「…?!何?」
「………いけないの」
「……あ?あぁ。いけない……え?行けないの?!」
「…えぇ。それじゃあ、私、これで……」有紀はそういうと、身を翻した。
「え?何っ?なんていったの?」
「……。」有紀は何も答えずに、そのまま可憐な足取りでゆっくりゆっくり歩き去った。 蛍と由香は、うーん、と頭をひねって「なんていったのかしら…ねぇ?」と思わず呟くしかなかった。

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