マジック・エンジェルほたる


  東京銀座四丁目の画廊「ギャレット・ラ・パームズ」の室内はさほど広くはない。
 広くもない室内にはついたて板が並んでいて、絵は額に入れて吊されていた。その絵とはもちろん赤井宝林の洋画のことである。
 蛍たちは個展会場へ向かって明るく、やはり「無駄話しながら」並んで歩いていた。
「あのねぇ。蛍ちゃん、蛍ちゃん!そんなことしている場合じゃないでしょっ」
 突然、空からひらりととんできたセーラが蛍に近付いてきて、そんな風に呟いた。ほとんど、誰もがその存在を忘れるほどに、この妖精はどこかに姿を消していた。そんなこともあって…、
「…誰?あんたは誰かしら?あんまり姿がみえないんで私忘れちゃったよ」
 と、蛍は冗談めかしにいった。
「あの…ねぇ。もおっ」妖精は少し言葉をつまらせてから。熱っぽい口調で「そんなことより…魔の女王「ダンカルト」の魔の手がこの地上に刻一刻と迫ってきているのよ。特訓とかしてさぁ…戦士としての自覚をもってもらわなくちゃ困るのよねぇ。それに…」
「まぁ、まぁ!」蛍はカラカラと笑っていった。「いいじゃん、今が楽しけりゃ!」
「…あのねぇ」セーラはやたらと呆れてしまった。まったく蛍ちゃんってば…。
「そういう考えだから…!!…あ、ちょっと待ってよ!」セーラは「お説教」を呟き出したが、それは無駄だった。蛍が、何も聞きもせずにスタスタと遠くまで歩いていったからだ。 そして、そんな蛍に付き合って呆れた時に口ずさむセリフ、口癖になってしまったロゴス(言葉)「…あのねぇ。もおっ、知らない!蛍ちゃんなんて大っ嫌い!」を溜め息まじりに妖精セーラはあもわず言ってしまうのである。そして、
「……なによ、何よ、もおっ!妖精だとおもって馬鹿にしちゃってさぁ!蛍ちゃんなんて……馬に蹴られて死んじゃえーっ!!」と可愛らしく癇癪を起こしてしまうのであった。

 
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